ノーコードでAI業務自動化を始める完全手順|ZapierとMake入門
- 1.ZapierとMakeはGmailやSlack・ChatGPTなどのアプリを「つなぐ」ノーコードツール。コードを一行も書かずに自動化できる。
- 2.最初に作るべき自動化は「フォーム回答→ChatGPTで要約→Slackに送信」など3ステップ以内のシンプルなもの。
- 3.失敗の9割は「トリガーの設定ミス」と「AIへの指示が曖昧すぎること」。具体的な指示文を用意してから組み始めると成功率が上がる。
この記事を読み終えると、プログラミングの知識がゼロでも「Googleフォームに問い合わせが届いたら、ChatGPTが自動で要約してSlackに通知する」という仕組みを今日中に作れるようになります。使うツールはZapierまたはMakeという「アプリとアプリをつなぐ橋渡し役」のサービスです。どちらも無料プランがあり、クレジットカードなしで始められます。
業務自動化と聞くと「エンジニアじゃないと無理」と思いがちですが、ZapierやMakeが普及した今は状況が変わっています。これらのツールは画面をクリックして設定するだけで、複数のアプリを連携できます。さらにChatGPTなどAIを「処理の途中に挟む」こともできるため、単純なデータ転送だけでなく「AIが文章を書く・分類する・翻訳する」作業も自動化できます。本記事では基本の考え方から、コピペで使える具体的な指示文、よくある失敗の直し方まで一気に説明します。
ZapierとMakeの違い:どちらを選ぶか
ZapierとMakeはどちらも「ノーコード自動化ツール」ですが、設計思想が少し違います。Zapierは「Zap(ザップ)」という単位で自動化を作り、画面がシンプルで直感的です。英語が読めなくても視覚的に理解しやすく、初めての1本を作るまでのスピードが速い。一方Makeは「シナリオ」という単位で、処理の流れを図のように描けます。条件分岐や繰り返しなど複雑な処理を視覚的に組みやすいため、慣れると応用の幅が広がります。どちらがよいかは目的次第で、「まず動くものを1つ作りたい」ならZapier、「複数の分岐を持つ複雑なフローを組みたい」ならMakeが向いています。両方に無料プランがあるので、まず片方を触ってみて合う方を使い続けるのが現実的な選び方です。
- Zapier:画面がシンプルで初心者にやさしい。無料プランは月100タスクまで。5000以上のアプリと連携可能(ツールにより変動するため公式サイトで確認を)。
- Make:処理フローを図で描けるため、複雑な条件分岐に強い。無料プランは月1000オペレーション(処理の単位)まで。
- 共通点:どちらもChatGPT(OpenAI)・Gmail・Googleスプレッドシート・Slack・Notionなど主要サービスと連携できる。
- 料金の考え方:タスク数・オペレーション数が増えると有料プランが必要になる。最初は無料で試し、月に詰まってきたら有料を検討する流れが無難。
自動化の基本構造:トリガー→アクションを理解する
ZapierでもMakeでも、自動化の骨格は「何かが起きたら(トリガー)→何かをする(アクション)」という2要素です。たとえば「Googleフォームに回答が届いたとき(トリガー)→ChatGPTに送って要約させ(アクション1)→Slackに投稿する(アクション2)」という流れになります。この考え方さえ押さえれば、どんな自動化も設計できます。失敗するときの大半は「トリガーとアクションのどちらを先に決めればよいかわからない」という混乱から来ます。答えは「トリガーを先に決める」です。なぜなら、アクションはトリガーが吐き出すデータに依存するからです。フォームの回答データがなければ、ChatGPTに何を渡すか決められません。トリガーを固定してからアクションを考える順番を守るだけで、設計がぐっとスムーズになります。
「どんな出来事が起きたら動き始めるか」を一番最初に言葉で書き出す。例:「問い合わせフォームに新規回答が来たとき」。これを決める前にツールを触り始めると迷子になりやすい。
Zapierで最初の自動化を作る:ステップ別の具体的な手順
ここでは「Googleフォームに問い合わせが届いたら、ChatGPTが80字以内で要約し、Slackの#問い合わせチャンネルに投稿する」という3ステップZapを作ります。所要時間は初回でも30〜40分程度です。まずzapier.comにアクセスしてGoogleアカウントでサインアップします。ダッシュボードに入ったら画面右上の「Create Zap」ボタンをクリック。次に出てくる「Trigger」の選択画面で「Google Forms」を検索して選択します。「Trigger Event」は「New Response in Spreadsheet」を選びます(Googleフォームは回答をスプレッドシートに記録するため、このイベントを使います)。Googleアカウントを連携し、対象のフォームに紐づいたスプレッドシートを選べばトリガー設定は完了です。「Test trigger」をクリックするとテスト用データが読み込まれます。このテストデータが後のAIへの入力になるため、フォームに1件テスト回答を入れておくと確認しやすくなります。
- ステップ1:zapier.comでアカウント作成(Googleログイン可)→「Create Zap」をクリック。
- ステップ2:Triggerに「Google Forms」→イベント「New Response in Spreadsheet」を選択→Googleアカウント連携→対象スプレッドシートを指定→「Test trigger」で動作確認。
- ステップ3:「+」ボタンでActionを追加→「ChatGPT」を検索→「Conversation」または「Send Message」を選択→OpenAIのAPIキーを連携(OpenAIのダッシュボードから発行したシークレットキーを貼り付ける)。
- ステップ4:「User Message」欄に後述の指示文を入力。文中にトリガーのデータ(例:フォームの回答テキスト)を「Insert Data」で差し込む。
- ステップ5:2つ目のActionで「Slack」を追加→「Send Channel Message」→チャンネルを指定→「Message Text」にChatGPTの返答(Output)を差し込む。
- ステップ6:「Test Zap」で全ステップを通しテスト→問題なければ「Publish」で有効化。
ChatGPTへの指示文(プロンプト)の作り方:曖昧にするとAIは迷う
ZapierやMakeでChatGPTに指示を渡すとき、「要約してください」だけでは出力がバラバラになります。理由は、AIへの指示が曖昧だと「何文字で?」「どんな形式で?」「誰向けに?」が未定義になり、毎回異なる形の返答が返ってくるからです。Slackに投稿する文章が毎回違う形式だと、読む人が混乱します。解決策は「字数・形式・読み手・トーン」を指示文に含めることです。以下にそのまま貼り付けて使える例を2つ用意しました。自動化の用途に合わせて「フォームの回答」の部分を、実際にトリガーから受け取るデータ項目に置き換えてください。
あなたは社内向けの業務アシスタントです。
以下のお客様からの問い合わせ内容を、社内Slackに投稿するための要約文にしてください。
【条件】
- 80字以内にまとめること
- 箇条書きは使わず1文で書くこと
- 「〜という問い合わせです」で終わること
- 固有名詞はそのまま残すこと
【問い合わせ内容】
{{フォームの回答テキスト}}あなたは問い合わせ窓口の仕分け担当です。
以下の問い合わせ内容を読み、緊急度を判定してください。
【緊急度の定義】
- 高:「今すぐ」「緊急」「できない」「止まっている」などシステム障害・即対応が必要なもの
- 中:質問・確認事項で当日中の返答が望ましいもの
- 低:資料請求・一般的な問い合わせ
【出力形式】(この形式だけで返答すること)
緊急度:[高/中/低]
理由:[30字以内で]
【問い合わせ内容】
{{フォームの回答テキスト}}実際のやり取り例:入力から出力の流れを確認する
場面設定:小さな飲食店がGoogleフォームで「予約・問い合わせフォーム」を運営しています。オーナーはスマホのSlackで通知を受けたいが、フォームの回答をそのまま転送すると長くて読みにくい。そこで上記プロンプト①を使い、ChatGPTに要約させてからSlackに投稿するZapを設定しました。フォームに以下の回答が届いたとします。
【フォームへの入力(トリガーのデータ)】 お名前:田中 花子 お問い合わせ内容:来週の土曜日、3月15日の夜7時から4名で予約したいのですが空いていますか?アレルギーがあってエビが食べられないメンバーが1名います。コースか単品かどちらでも大丈夫です。ご確認よろしくお願いします。— Googleフォームの回答例(架空)
【ChatGPTの返答(Slackに投稿される内容)】 田中花子様より3月15日(土)19時・4名・エビアレルギー1名の予約可否確認という問い合わせです。— ChatGPT(GPT-4o)の出力例(架空)
元の入力は143字でしたが、ChatGPTが48字の1文に圧縮しました。Slackの通知でひと目で内容がわかる形になっています。「エビアレルギー」という重要情報も残っており、コース・単品の迷いは省かれています。このように、プロンプトに「何を残すか・何を削るか」の基準を書いておくと、AIの判断が安定します。
MakeでChatGPT連携をする場合の違いと補足
Makeでも基本の流れはZapierと同じです。「シナリオ」を新規作成し、最初のモジュール(Makeでのアクションの呼び名)でトリガーを設定します。たとえばGoogleフォームではなくGoogleスプレッドシートを監視する場合、「Watch Rows」モジュールを使います。ChatGPTを挟む場合は「OpenAI(ChatGPT)」モジュールを追加し、「Create a Completion」または「Create a Chat Completion」を選択します。指示文の組み立て方はZapierと同じで、本文欄にプロンプトを書き、前のモジュールのデータを「{{モジュール番号.フィールド名}}」の形式で差し込みます。Makeが優れている点は、「緊急度:高」の場合だけ別のSlackチャンネルに投稿する、という「条件分岐(Routerモジュール)」を視覚的に組みやすいことです。上述のプロンプト②で返ってくる「緊急度:高/中/低」の文字列を条件としてルーターに渡せば、3つの通知先に自動で振り分けることができます。
ChatGPTの返答に「高/中/低」など決まった文字列を含めるよう指示しておくと、Makeのフィルター条件に「テキストが『高』を含む」と設定するだけで分岐できる。出力形式を固定するプロンプトが必須。
最初に気をつけること:OpenAI APIキーの取得と費用管理
ZapierとMakeのどちらでChatGPTを使う場合も、OpenAIのAPIキーが必要です。APIキーはOpenAIのウェブサイト(platform.openai.com)にアクセスし、「API Keys」メニューから発行できます。注意点が2つあります。1つ目は、APIキーは発行時にしか全文が表示されません。その場でメモ帳かパスワードマネージャーに保存してください。再表示はできず、紛失したら新しいキーを発行し直す必要があります。2つ目は費用管理です。APIは呼び出した回数・処理した文字数に応じて課金されます(料金体系はモデルや時期により変わるため公式サイトで確認してください)。自動化を設定すると毎日何十回・何百回と呼び出すことがあるため、OpenAIのダッシュボードで「Usage Limits(使用上限)」を設定しておきましょう。目安として、最初は月額5〜10ドル程度の上限を設けておくと、誤設定による想定外の課金を防げます。
- APIキー取得場所:platform.openai.com → 左メニュー「API Keys」→「Create new secret key」。
- キーはsk-から始まる長い文字列。発行直後にコピー→パスワードマネージャーに保存。
- Zapierへの入力場所:ChatGPTアクションの「App & account」画面→「Connect」→「API Key」欄に貼り付け。
- 費用の上限設定:platform.openai.com → 「Billing」→「Limits」→「Set a monthly budget」で上限額を入力。
- 使いすぎを防ぐ追加策:ZapierとMakeのZap・シナリオ自体にも「月何回まで動かすか」の上限設定機能があるため活用する。
よくある失敗と直し方:つまずきやすい3つのポイント
自動化を初めて設定すると、テストは通るのに本番で動かないというケースが多く起きます。失敗パターンには法則があります。以下に典型的な3つを整理します。
- 【失敗①】Zapが有効になっているのに動かない。原因:「Publish(または Turn On)」ボタンを押し忘れている。Zapierはテスト完了後に明示的に有効化しないと動きません。直し方:ダッシュボードのZap一覧でスイッチがオンになっているか確認する。Makeはシナリオ画面の「Scheduling」をオンにする必要があります。
- 【失敗②】ChatGPTの返答がバラバラで、Slackへの投稿が毎回違うフォーマットになる。原因:プロンプトに「この形式で返答すること」という指示が不足している。直し方:プロンプト末尾に「必ず上記の形式だけで返答し、余計な説明文を加えないこと」と明記する。さらに出力例を1つプロンプト内に書いて見せると安定しやすい。
- 【失敗③】トリガーのテストは成功するのに、実際にフォームに入力しても動かない。原因:Googleフォームとスプレッドシートの連携がZapierに正しく認識されていない。特にフォームを後からコピーした場合に起きやすい。直し方:ZapierのTrigger設定を開き直し、「Account」の再認証→スプレッドシートの再選択→「Test trigger」を再実行する。MakeならGoogleスプレッドシートモジュールの「Watch Rows」を開き直して再接続する。
【出力ルール(必ず守ること)】
- 以下の形式だけで返答すること
- 形式以外の言葉(「わかりました」「以下のとおりです」等)は一切書かないこと
- 形式の例:
要約:〇〇という問い合わせです。
【問い合わせ内容】
{{フォームの回答テキスト}}
要約:末尾に出力の冒頭文字を書いておくと、AIがその続きから返答を始めるため、「わかりました」などの前置きが入りにくくなる。これはプロンプトエンジニアリングでよく使われる「出力誘導」の手法。
応用:最初の1本ができたら次に試したい自動化3選
基本のフォーム→ChatGPT→Slack連携が動いたら、次のステップとして試しやすい自動化を3つ紹介します。どれも今回学んだ「トリガー→ChatGPT→アクション」の構造を応用したものです。難易度は低い順に並べています。1つ目は「Gmailに届いたメールの要約をSlackに転送する」。GmailのNew Email(条件:特定の件名やラベルのメールのみ)をトリガーにし、本文をChatGPTで200字以内に要約してSlackに投稿します。メールを開かなくても概要をSlackで把握できるため、情報確認の往復が減ります。2つ目は「Googleスプレッドシートに新しい行が追加されたら、ChatGPTでその行の内容に合った返信文を下書きしてGmailの下書きに保存する」。顧客リストへのサンクスメール作成などに使えます。3つ目はやや複雑ですが「Slackの特定チャンネルに投稿されたメッセージをChatGPTが要約し、毎日17時にNotion日報ページに自動追記する」。ScheduleトリガーとMakeのAggregate(集約)機能を組み合わせます。
- 応用①:Gmail新着→ChatGPT要約→Slack通知(難易度:低。今回の手順とほぼ同じ構造)
- 応用②:スプレッドシート新行追加→ChatGPTでメール下書き生成→Gmailの下書きに保存(難易度:中。Gmail「Create Draft」アクションを使う)
- 応用③:Slackの投稿をMakeで毎日集約→ChatGPTで日次サマリー生成→Notionに追記(難易度:高。Makeのスケジューラーとデータストア機能が必要)
最初の1本を完成させることで「どのデータがどこに流れているか」が体感でわかる。2本目からは設計にかかる時間が半分以下になることが多い。まず1本動かすことを最優先にする。
セキュリティと情報管理:個人情報を流す前に確認すること
ZapierやMakeを通じてChatGPTのAPIにデータを送る場合、そのデータはOpenAIのサーバーを経由します。OpenAIはAPIを通じて送信されたデータをデフォルトでモデルの学習に使わないポリシーを取っていますが、利用規約は変わる可能性があるため、最新の規約を公式で確認する習慣をつけてください。特に顧客の氏名・住所・電話番号・健康情報など個人情報を含むデータを流す場合は、社内の個人情報管理規程や自社プライバシーポリシーと照らし合わせる必要があります。安全策として、「名前は送らずIDだけ送り、ChatGPTの処理後に元データと突合する」設計や、送信前に個人情報に当たるフィールドをZapierのFormatter機能で空欄に置換する方法があります。業種によって(医療・金融・士業など)は特に注意が必要です。
よくある質問
- Q:ZapierもMakeも英語UIですが、日本語で使えますか? A:2024年時点では両ツールとも基本的に英語UIです。ただし、アプリの選択や設定項目は固有名詞が多く、翻訳ツール(ブラウザの翻訳機能など)を使えば内容は十分理解できます。プロンプトや差し込むデータは日本語のまま処理できます。
- Q:無料プランで何本くらい自動化を動かせますか? A:Zapierの無料プランは月100タスク(1タスク=1つのアクションの実行1回)、Makeは月1000オペレーションが目安です。1日10件の問い合わせを処理するZapなら、月300タスク程度になります。業務量が増えてきたら有料プランへの移行を検討してください。プランの詳細は公式サイトで変わることがあるため、契約前に確認を。
- Q:APIキーを間違えてZapierに設定してしまったが、どこで変更できますか? A:Zapierの場合、左メニューの「Connected Apps」からOpenAIの連携を探し、「Reconnect」または「Edit」を選ぶと新しいAPIキーを入力し直せます。Makeの場合は「Connections」メニューから対象のOpenAI接続を選んで更新します。古いAPIキーはOpenAIのダッシュボードで無効化(Revoke)しておくことを忘れずに。
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