AIに頼んではいけないこと:個人情報と最新情報の落とし穴
- 1.AIに個人情報(氏名・住所・電話番号など)を入力すると、学習データになるリスクがあり、情報漏えいにつながる可能性がある
- 2.AIの知識には「カットオフ日」という締め切りがあり、それ以降の出来事は知らない。最新情報の確認に使うと誤った事実を信じてしまう
- 3.「入力していい情報」と「AIに頼んではいけないタスク」を区別するだけで、リスクをほぼゼロにできる
この記事を読み終えると、次の2つができるようになります。①AIチャットに「入力してはいけない情報」を即座に判断できる。②「この情報、AIに確認してもいいのか?」と迷ったとき、5秒で答えが出る基準を持てる。ChatGPTやClaudeなどのAIは非常に便利ですが、何でも任せていいわけではありません。使い方を間違えると、自分の個人情報が外部に漏れたり、古い・誤った情報を正しいと信じ込んで仕事や判断に使ってしまう危険があります。
特に注意が必要なのは「個人情報の入力」と「最新の事実確認」です。この2つは、初心者がつまずきやすいポイントの筆頭でもあります。難しい話は一切しません。「こう入力するとこうなる」という具体例を中心に、今日から実践できる形で解説します。記事の後半には、コピペで使えるプロンプト例と「よくある失敗→直し方」のセットも載せています。
そもそも「AIに頼んではいけないこと」とは何か
AIに頼んではいけないことは、大きく2種類に分かれます。「入力してはいけない情報」と「確認してはいけないタスク」です。前者は個人情報・機密情報など、AIのサーバーに送ってしまうこと自体がリスクになるもの。後者は最新ニュース・現在の法律・今日の株価など、AIが知識として持っていない可能性が高いものです。両者を混同している人が多く、「AIが答えを返してくれた=正しい・安全」と思い込んでしまうのが最も危険なパターンです。AIはどんな質問にも何かしら答えを返しますが、それが正しいかどうかはまったく別の話です。
個人情報をAIに入力すると、具体的に何が起きるのか
AIチャットに文字を打ち込むとき、その文章はインターネットを通じてサービス提供会社のサーバーに送信されます。多くのサービスでは「入力内容をAIの改善のために使用する場合がある」と利用規約に書かれています(ツールにより異なります。設定でオフにできるものもあります)。つまり、名前・住所・電話番号・メールアドレス・マイナンバー・クレジットカード番号などを入力すると、それがサーバーに残り、最悪の場合はモデルの追加学習に使われるリスクがあります。一度送信した情報は「取り消し」ができません。たとえば「山田太郎、〒100-0001 東京都千代田区…」と入力して下書きメールを作らせた場合、その住所情報はサービス側に渡ってしまっています。
AIチャットへの入力は「公開の場で話すのと同じ」と考える。絶対に他人に教えない情報は、AIにも入力しない。これが最も簡単で確実なルールです。
絶対に入力してはいけない情報リスト
- 氏名+住所+電話番号のセット(組み合わさると個人を特定できる)
- マイナンバー・パスポート番号・運転免許証番号(公的な識別番号)
- クレジットカード番号・暗証番号・銀行口座情報
- 会社の未公開情報・顧客リスト・社外秘の資料の全文
- 他人のメールアドレス・SNSアカウント・個人が特定できる写真の説明
- 医療記録・病名・処方薬名(本人と紐づく形での記載)
「入力してもいい情報」との境界線はどこか
判断基準は「その情報だけで自分(または他人)が特定できるか」です。たとえば「東京都在住の30代の会社員」という条件なら、個人を特定することはできないのでリスクは低いです。一方「山田太郎、35歳、東京都練馬区○○町1-2-3在住、○○会社勤務」というセットは完全に個人を特定できるため入力してはいけません。仕事のメール文章を作ってもらうときも、宛先の会社名・担当者名・取引金額・プロジェクト名などは外して、代わりに「A社のB担当者に、先日の提案への返答メールを書いてください」という形に置き換えましょう。固有名詞を仮の名前や記号に置き換えるだけで、95%のリスクを排除できます。
【やってはいけない入力例】 件名:請求書の催促メールを書いてください 宛先:田中誠様(株式会社〇〇商事) メールアドレス:tanaka.makoto@xxxx.co.jp 電話:090-xxxx-xxxx 内容:5月10日の請求書(金額:980,000円)がまだ未入金です。 → 取引先の個人名・メアド・電話番号・金額がすべて外部サーバーに送信されてしまいます。
【安全な入力例】 件名:請求書の催促メールを書いてください 宛先:A社のB担当者(名前は適当に作ってください) 内容:先月発送した請求書がまだ未入金です。金額は伏せてください。 丁寧かつ穏やかなトーンで、80〜120字程度でお願いします。 → 実在する個人情報はゼロ。AIが文章の「型」だけを作り、あとで自分で名前と金額を入れればOKです。
「最新情報」をAIに確認してはいけない理由:カットオフ日の仕組み
AIの大規模言語モデル(難しい言葉ですが「AIの頭の中の辞書」と思えばOK)には、学習データの締め切り日があります。これを「カットオフ日(知識の締め切り)」と呼びます。たとえばあるAIのカットオフが2024年初頭なら、それ以降に起きた出来事は一切知りません。法改正・新製品の発売・企業の倒産・最新の研究結果・最近の事件など、すべて「知らない」か「古い情報を正しいと言ってしまう」状態です。怖いのは、AIが「知らない」と正直に言わず、それっぽい情報を自信満々に返してしまうことがある点です。これを「ハルシネーション(AIの幻覚)」と呼びます。
カットオフ以降の情報はAIにとって存在しない。「最近どうなった?」「現在の〜は?」と聞いても、正確な答えは返ってきません。最新情報は必ず公式サイト・政府機関・信頼できるニュースソースで確認してください。
AIに最新情報を聞いてしまった場合の実際のやり取り例
次は、個人事業主のAさんが「インボイス制度の最新の経過措置について」AIに質問した場面です。AIはそれらしい答えを返しますが、内容が古い可能性があります。このやり取りを通じて「AIの答えをそのまま信じる危険」を体感してください。
【Aさんの入力】 インボイス制度の2割特例は今も使えますか?最新の情報を教えてください。 【AIの返答例(ハルシネーションの可能性あり)】 はい、インボイス制度の2割特例は使えます。 免税事業者からインボイス発行事業者になった場合に、 納税額を売上税額の2割に抑えられる措置です。 (以下、一見正確そうな説明が続く) 【なぜ危険か】 AIは自信を持って答えていますが、特例の「適用期間」や 「要件の変更」はカットオフ以降に改正されている可能性があります。 この情報をそのまま確定申告に使うと、誤申告のリスクがあります。 【正しい対処】 → 国税庁のWebサイト(nta.go.jp)で最新情報を確認する。 → AIは「制度の概要を理解するための説明」にだけ使い、 「現在の要件の確認」には使わない。
AIに確認してはいけないタスクの具体的なリスト
- 今日・今週・今月のニュース、最新の事件・事故(カットオフ以降は不明)
- 法律・税制・補助金の「現在の」要件や申請期限(改正されている可能性がある)
- 現在の株価・為替レート・仮想通貨の価格(リアルタイムデータはAIにない)
- 特定の人物が「今」何をしているか(芸能人の結婚・離婚・死亡などの近況)
- 最新モデルのスペック比較(発売後に仕様変更されることもある)
- 薬の最新の副作用情報・医薬品の承認状況(必ず医師・薬剤師に確認)
よくある失敗と直し方
ここでは初心者がよくやってしまう失敗を3つ取り上げます。それぞれ「なぜ起きるのか」「どう直せばいいか」をセットで説明します。
- 【失敗①】メールの下書きをAIに作らせるとき、宛先の会社名・担当者名・金額をそのまま入力してしまう。 → なぜ起きる:「AIは自分のPC内で動いている」と思い込んでいるため。実際はサーバーに送信している。 → 直し方:宛先を「A社のB様」、金額を「〇〇円」に置き換えてから入力。文章が完成したら自分で固有情報を書き入れる。
- 【失敗②】「最新の補助金情報を教えて」と聞いて、AIの回答をそのまま申請書に使う。 → なぜ起きる:AIが流暢に回答するため、正確に見えてしまう。 → 直し方:AIは「補助金の種類の概要を知る」「申請書の文章を整える」ために使い、締切・金額・要件は公式サイトで確認する。
- 【失敗③】「このAIは最新の情報を持っている」と思い込み、カットオフを確認しないまま使う。 → なぜ起きる:AIのカットオフ日がどこかを意識する習慣がない。 → 直し方:使い始めに「あなたの知識の締め切り(カットオフ)はいつですか?」と聞く。多くのAIは正直に答えてくれる。ただし、この回答自体もツールにより精度が異なるため、公式のヘルプページでも確認する。
安全に使うための3ステップ:今日から実践できる手順
AIを安全に使うために、入力前に必ず3つの確認をしてください。全部で10秒もかかりません。ステップ1:「この情報に、実在する人物・会社・番号が含まれているか?」→ 含まれていたら記号に置き換える。ステップ2:「聞こうとしていることは、現在の状況・最新のデータが必要か?」→ 必要な場合はAIを使わず公式サイトへ。ステップ3:「AIの回答を、確認なしにそのまま使うか?」→ 使う前に一次情報(公式サイト・専門家)で裏取りをする。この3ステップを習慣にするだけで、情報漏えいと誤情報を信じるリスクを大幅に減らせます。
「AIが答えた=正しい」ではなく「AIが答えた=たたき台」と考える。AIの出力はあくまで出発点。最終確認は人間が行うのが安全な使い方の大原則です。
ChatGPT・Claude・Geminiで違いはあるか
個人情報のリスクという観点では、どのAIサービスを使っても「入力した文章はサーバーに送信される」という点は共通です。ただし、学習への使用可否や設定の細かさはサービスによって異なります。たとえば、ChatGPTには「チャット履歴のオフ」設定があり、これをオンにすると入力内容がモデルの学習に使われないとされています(詳細はOpenAIの公式ポリシーを確認してください)。Claudeや他のツールにも類似の設定がある場合があります。いずれにせよ「設定を変えれば完全に安心」とは断言できません。最も確実なのは「そもそも個人情報を入力しない」です。カットオフ日についても各ツールで異なります。Geminiのように一部のバージョンがリアルタイム検索と連携しているケースもありますが、検索結果の正確性には限界があります。使う前に「このツールはいつの情報まで知っているか」を確認する習慣をつけましょう。
AIを安全かつ最大限に活かせるタスクとは
ここまで「してはいけないこと」を中心に説明してきましたが、逆に言えばそれ以外のタスクにはAIは非常に強いです。「過去の知識をもとにした解説・説明・要約・翻訳・文章の校正・アイデア出し・プログラムコードの作成・テンプレート作成」などは、個人情報も最新情報も不要なため安心して活用できます。たとえば「ビジネスメールの返信テンプレートを10パターン作って」「この文章を小学生にわかるように書き直して」「○○という概念をたとえ話で説明して」といった依頼は、個人情報ゼロ・最新情報不要で完結します。AIを「ドラフト(下書き)作成マシン」として使い、最終チェックは自分が行うという分業が最も安全で効率的な使い方です。
AIが得意なのは「言葉を作る・整える・変換する」タスク。苦手なのは「今の事実を確認する・個人情報を含む書類を作る」タスク。この区別を覚えるだけで使い方は大きく変わります。
よくある質問(Q&A)
- Q. ChatGPTの「メモリ機能」をオフにすれば個人情報を入力しても大丈夫ですか? A. メモリ機能のオフは「AIが前の会話を覚えない」という設定であり、「入力内容がサーバーに送信されなくなる」わけではありません。送信自体は変わらず行われます。個人情報の入力を安全にするわけではないので、やはり入力しないのが原則です。
- Q. AIに「これは秘密にしてください」と伝えれば安全ですか? A. いいえ。AIに伝えた「秘密にして」という指示は、データの送信や保存の仕組みには影響しません。AIはデータの取り扱いポリシーを変える権限を持っていません。秘密にしたい情報はそもそも入力しないことが唯一の確実な対策です。
- Q. AIが「最新情報です」と言っていたら信じていいですか? A. 信じないでください。AIは「最新情報です」という言葉を、自分の知識の中で最も新しい情報という意味で使っている場合があります。現在の日付における最新かどうかは保証されません。「最新情報です」という文言を見たら、むしろ「本当に今の情報か?」と疑って公式サイトで確認するクセをつけましょう。
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