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AIで問い合わせ対応を自動化する手順と、任せてはいけない線引き

#問い合わせ自動化#ChatGPT業務活用#中小企業DX#カスタマーサポート
AIのトリセツ仕事で使う
この記事の要点
  • 1.FAQをもとにシステムプロンプトを設計すれば、今日から問い合わせの7〜8割に自動返答できる体制が作れる
  • 2.クレーム・個人情報・金額確定・法的リスクを含む問い合わせは必ず人間が対応する
  • 3.AIの返答をそのまま送らず「下書き確認ステップ」を挟むと、ミスを防ぎながら作業時間を半分以下に削減できる

この記事を読み終えると、あなたはすぐに2つのことができるようになります。1つは、自社のFAQをAIに学習させて問い合わせの返答下書きを自動生成する仕組みを作ること。もう1つは、AIに任せると危険な問い合わせの種類を見分けて、人間が介入するルールを社内に共有すること。ツールはChatGPTの無料プランでも始められます。月額費用ゼロ、設定時間は最初の1時間だけ。難しいコーディングは一切不要です。

多くの中小企業では、問い合わせ対応に1件あたり平均5〜15分かかります(内容確認、返答文の作成、送信確認の合計)。1日10件なら最大150分。その大半は「営業時間は何時までですか」「返品できますか」のような、答えが決まっている質問です。こうした定型問い合わせこそAIが得意とする領域で、回答の品質を保ちながら返答時間を数分以内に縮めることができます。この記事では、実際に使えるプロンプトと失敗パターンをセットで紹介します。

まず「自動化できる問い合わせ」と「できない問い合わせ」を仕分ける

自動化の設計で最初にやるべきことは、自社に届いている問い合わせを種類別に書き出すことです。「目的を明確にしましょう」という抽象的な話ではなく、文字通り過去1ヶ月のメールや問い合わせフォームの履歴を開いて、内容を20件ぶんメモするだけでOKです。実際にやってみると、問い合わせは大きく3種類に分かれることに気づきます。①答えが一つに決まる情報確認系(営業時間、料金、在庫の有無など)、②状況によって答えが変わる個別対応系(注文のキャンセル、配送遅延の理由など)、③感情や判断が必要なクレーム・交渉系。AIが安全に対応できるのは①だけです。②は「下書きをAIが作り人間が確認する」ハイブリッド運用が現実的で、③は必ず人間が担当します。この仕分けをせずに始めると、AIが不適切な返答を送信するリスクが高まります。

  • 【AI完全対応OK】営業時間・所在地・料金表・支払い方法・返品ポリシーなど、答えが社内ルールで固定されている質問
  • 【AI下書き+人間確認】注文変更、配送状況の確認、個別見積もり依頼など、事実確認が必要な質問
  • 【必ず人間対応】クレーム、返金交渉、法律や契約に関する質問、個人情報の変更依頼、感情的に強い言葉を含む問い合わせ

ステップ1:自社のFAQを200字以内で箇条書きにまとめる

AIに正確な返答をさせるには、まず「正しい情報」を与える必要があります。これを「システムプロンプト」(AIへの事前指示)に組み込みます。システムプロンプトとは、ChatGPTで言えば会話の最初に与える「AIへのルール設定文」です。ここに自社のFAQを入れておくと、AIはその範囲内で返答を作ります。FAQは完璧に整備されていなくて構いません。まずは「よく来る質問5〜10個」をQ&A形式でメモしてください。1問あたり答えは2〜3文、計200字以内を目安にします。長すぎると、後でシステムプロンプトに貼ったときにAIが混乱しやすくなります。例えば「Q: 返品はできますか? A: お届けから7日以内、未開封のものに限り返品を承ります。送料はお客様負担です。返品希望の方はメールにてご連絡ください」という形式です。

ステップ2:コピペで使えるシステムプロンプトを設定する

FAQができたら、次はChatGPTのシステムプロンプトに設定します。ChatGPTのウェブ版(chat.openai.com)では、GPsの「カスタム指示」機能、またはAPIを使った場合のsystemロールに相当します。無料プランでは「カスタム指示」という設定欄(右上のアカウントアイコン→「カスタム指示」)に貼り付けるのが最も手軽な方法です。以下のテンプレートをそのままコピーして、【 】の中を自社情報に書き換えてください。これを設定するだけで、そのChatGPTセッション全体でAIが自社スタッフとして動くようになります。ツールによって設定場所の名称は異なりますが(ClaudeではProject InstructionsやSystem Prompt、GeminiではGems設定など)、考え方は同じです。

コピペできるシステムプロンプト(自社情報を【】内に書き換えて使用)
あなたは【会社名】のカスタマーサポート担当です。
以下のルールと情報をもとに、お客様の問い合わせへの返答下書きを作成してください。

【ルール】
1. 以下のFAQに書かれていないことは「担当者に確認の上ご連絡します」と答え、絶対に推測で答えない。
2. クレームや返金の要求が含まれる場合は「この件は担当者がご連絡します」とだけ返し、それ以上の判断をしない。
3. 返答は敬語・丁寧語で、3〜5文以内にまとめる。
4. 個人情報(氏名・住所・クレジットカード番号など)が含まれる場合は処理せず、「担当者よりご連絡いたします」と返す。

【自社FAQ】
Q: 営業時間は何時ですか?
A: 【例:平日10時〜18時、土日祝は休業です。】

Q: 返品はできますか?
A: 【例:お届けから7日以内、未開封品に限り返品可能です。送料はお客様負担です。】

Q: 支払い方法を教えてください。
A: 【例:クレジットカード(VISA・Mastercard)、銀行振込、コンビニ払いに対応しています。】

(他に必要なQ&Aをここに追加してください)

ステップ3:実際の問い合わせ文を貼って返答下書きを生成する

システムプロンプトの設定が終わったら、実際の問い合わせ文をそのままChatGPTのチャット欄に貼るだけです。AIが上で設定したルールとFAQに従って、返答の下書きを生成します。以下に実際のやり取り例を示します。場面設定は「雑貨のECショップ、お客さんから返品について問い合わせメールが届いた」ケースです。

実際の問い合わせ文(チャット欄にそのまま貼る)
以下の問い合わせへの返答下書きを作ってください。

---
件名:商品の返品について
本文:先日注文した雑貨セット(注文番号12345)が届きましたが、
色が思っていたものと違いました。返品は可能でしょうか。
購入から3日が経過しています。箱は開けましたが商品自体は使用していません。
---
【返答下書き】 お問い合わせいただきありがとうございます。 ご注文番号12345の件、承りました。 当店の返品ポリシーでは、お届けから7日以内・未開封品を対象としております。ご連絡いただいた時点では7日以内のご条件は満たしておりますが、箱を開封されているとのことで、この件につきましては担当者が詳細を確認の上、改めてご連絡いたします。 恐れ入りますが今しばらくお待ちくださいますようお願い申し上げます。ChatGPT(GPT-4o)による返答例(システムプロンプト設定済みの場合)

この返答を見てください。AIは「開封済みは返品ポリシーの条件外かもしれない」と判断し、勝手に「返品できません」とも「できます」とも言わず、担当者へ引き継ぐ形にしています。これはシステムプロンプトで「FAQに書かれていないことは推測で答えない」とルール化したためです。このような境界ケースを自動でエスカレーション(担当者への引き継ぎ)させる仕組みが、安全な自動化の核心です。担当者は届いた下書きを読んで「返品を承るか否か」だけを判断し、文面はほぼそのまま使えます。結果として返答作成時間が5〜10分から確認の1〜2分に短縮できます。

ステップ4:返答を送信前に必ず人間が確認する「下書きフロー」を作る

AIが生成した返答をそのまま自動送信する運用は、現時点ではほとんどの中小企業にとって早すぎます。理由は2つあります。1つは、AIが稀に「ハルシネーション」(もっともらしい嘘をつく現象)を起こすこと。2つ目は、FAQにない新しい状況に遭遇したとき、ルール通りに動かない場合があること。特に初期の1〜2ヶ月は、AIの返答に必ず目を通すことを習慣にしてください。具体的なフローは「問い合わせが届く→AIで下書き生成(1〜2分)→担当者が読んで修正・送信(1〜2分)」の3ステップです。それでも従来の「文章を一から書く(5〜10分)」より大幅に速く、担当者の認知負荷も下がります。慣れてきたら、定型的な営業時間・料金の質問のみ自動送信に切り替えるという段階的な拡張が現実的です。

「全自動」より「半自動」から始める理由

AIの返答を人間が確認するステップを必ず挟む。これはスピードを犠牲にするのではなく、「AIのミスを最小コストで検知する安全装置」として機能する。特に立ち上げ初期の1ヶ月は、どんな失敗パターンが出るかを観察する期間として活用する。

AIに絶対に任せてはいけない5つの問い合わせ類型

「線引き」の話は抽象的になりがちですが、具体的な問い合わせ文の特徴として把握するのが実用的です。以下の5種類が届いたら、AIの下書きを使わず直接人間が対応します。理由も合わせて説明します。なぜ危険かを理解しておくと、社内でルールを共有しやすくなります。

  • クレーム・怒りを含む問い合わせ:感情的な文章にAIが的外れな定型文を返すと、火に油を注ぐ結果になる。「誠意を見せろ」という要求に「担当者が確認します」だけでは不十分な場面も多い
  • 返金・補償・値引き交渉:金額の確定はビジネス上の意思決定であり、AIに権限はない。誤って「返金します」と書かれた下書きを送ると法的効力が生じる可能性がある
  • 個人情報の変更・確認依頼:氏名・住所・クレジットカード情報・パスワードが含まれる問い合わせは、AIに読み込ませる前にマスキング(伏せ字)が必要。そのままペーストするとセキュリティリスクになる
  • 法律・契約・医療・専門的判断が絡む質問:AIは法律や医療の専門家ではなく、誤った情報を自信ありげに返すことがある。「これは返品できる権利がありますか」のような法的判断はAIに答えさせない
  • 報道・SNS炎上リスクのある案件:クレームが複数件続いていたり、SNSでの言及があるような案件は、会社の広報判断が必要。AIが個別対応を続けると一貫性のない返答が出回るリスクがある
「担当者が確認します」は魔法の言葉ではない

システムプロンプトで「わからないことは担当者に引き継ぐ」と設定しても、AIが判断を誤って答えてしまうケースは起きる。送信前に必ず目視確認することが、唯一の確実な防衛手段。

応用:問い合わせの「振り分け判定」もAIにやらせる方法

慣れてきたら、問い合わせが届いた時点で「これはAI対応OK・要人間対応・要緊急対応」の3段階に自動分類させるプロンプトを追加すると、担当者の判断コストがさらに下がります。以下のプロンプトを使うと、AIが問い合わせを読んで分類と理由を返してきます。これを最初のステップとして使い、「要人間対応」と判定されたものだけを担当者に回すルーティングを作ると、1日10件の問い合わせのうち確認が必要なものを3〜4件に絞れることがあります(あくまで目安であり、業種・状況により異なります)。

問い合わせ振り分け判定プロンプト(コピペして使用)
以下の問い合わせを読んで、3段階で分類してください。

分類基準:
・【A:AI対応OK】:答えが固定情報(営業時間・料金・ポリシーなど)で完結する質問
・【B:要人間確認】:個別状況の確認や判断が必要だが、緊急ではない質問
・【C:要緊急対応】:クレーム、返金要求、感情的な文章、法的言及を含む質問

出力形式:
分類:【A / B / C のどれか】
理由:(1〜2文で説明)

---問い合わせ本文ここから---
【ここに問い合わせ文を貼り付ける】
---問い合わせ本文ここまで---

よくある失敗と直し方

実際にAI問い合わせ対応を試し始めた方が経験しやすい失敗パターンを3つ挙げます。失敗の「原因の構造」を理解することで、同じミスを繰り返さずに済みます。

  • 【失敗①】AIが「返品できません」と断言する返答を作った → 原因:システムプロンプトに「曖昧なケースは担当者に引き継ぐ」というルールがない。直し方:プロンプトに「FAQに明記されていない例外的なケースは、必ず『担当者が確認します』と返し、断言しない」の一文を追加する
  • 【失敗②】AIが問い合わせにない情報を「おそらく〜です」と返答する → 原因:ハルシネーション(AIの推測)。直し方:プロンプトに「推測は絶対にしない。知らないことは知らないと返す」を明記。さらに返答前に担当者確認を必ず挟む
  • 【失敗③】個人情報(住所・注文番号など)が含まれた問い合わせをそのまま貼り付けた → 原因:セキュリティポリシーの未設定。直し方:問い合わせ文を貼る前に、氏名・住所・カード番号を「〇〇」や「**」に置換するルールを社内で徹底する。ツールの利用規約も確認する
失敗を減らす最も簡単な方法

システムプロンプトの最後に「判断に迷う場合は必ず『担当者がご確認の上ご連絡いたします』と返し、それ以上のことは何も言わない」と1行追加するだけで、AIの暴走リスクが大幅に下がる。

ChatGPT・Claude・Gemini、どれを選べばいいか

この用途で最初に試すなら、どのツールでも基本的な動作は同じです。ただし、細かい違いがあります。ChatGPT(OpenAI)はシステムプロンプトの設定が「カスタム指示」として設定できるため、毎回貼らなくてよいのが便利です。Claudeは長い文章の扱いや、指示の守り方が丁寧という声が多くあります。Geminiは既存のGoogleワークスペース(Gmail・Googleフォームなど)と連携しやすい面があります。ただし、これらの評価はツールのバージョン更新により変わります。最終的な性能差よりも、「実際に自社のFAQを貼って試してみること」の方が重要です。まず無料プランで1週間使ってみて、返答の精度と使いやすさを自分の目で確認することを強くすすめます。

導入前にチェックすべき3つの社内整備

ツールの設定よりも先に、社内の整備が必要な点があります。この3点を決めておかないと、後から混乱します。1つ目は「誰がAIの返答を確認するか」の担当者決め。AIが下書きを作っても確認者がいなければ意味がありません。2つ目は「AIへの個人情報貼り付け禁止ルール」の共有。特にクラウドAIツールは、入力した内容がどう扱われるかを各ツールの利用規約で確認してから使うことが必要です。3つ目は「AI対応履歴の記録方法」。AIがどんな下書きを作り、担当者がどう修正して送ったかを記録する仕組み(Googleスプレッドシートなど簡単なもので十分)があると、後からFAQの改善に役立てられます。

最初の1週間でやること(今日からの行動ステップ)

①過去の問い合わせ20件をA/B/Cに仕分ける(30分)→②Aに該当する質問でFAQを作る(30分)→③この記事のシステムプロンプトをコピペして設定する(10分)→④翌日届いた問い合わせ1件で試してみる。これだけで「自動化の実感」が得られる。

よくある質問

  • Q: 無料プランのChatGPTでもできますか? A: できます。ただし、無料プランでは「カスタム指示」に文字数制限がある場合があります(ツールのバージョンにより異なります)。FAQが多い場合は、毎回「以下のFAQを参照してください:〜」と冒頭に貼る方法でも代用できます。有料プランへのアップグレードは、無料で試して効果を実感してからで十分です。
  • Q: 問い合わせフォームと直接連携させることはできますか? A: Zapier・MakeなどのノーコードツールとChatGPTのAPIを組み合わせることで、フォームへの入力を自動でAIに送る仕組みを作ることは技術的に可能です。ただし、APIの利用には費用が発生し(使用量課金)、ノーコードツールの設定も必要です。まずは「手動でコピペする運用」から始めて、効果を確認してから自動化の拡張を検討することをすすめます。
  • Q: AIが間違った返答を送ってしまった場合、責任はどうなりますか? A: 現時点では、AIツールを利用して送った返答の責任はすべて送信者(企業・担当者)にあります。AIツール提供会社は返答内容の正確性について保証しません。だからこそ、送信前の人間によるチェックが法的・ビジネス的に不可欠です。特に金額・返品条件・納期など契約に関わる情報が含まれる場合は特に慎重に確認してください。
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